遭難もののノンフィクションをリレー形式で紹介してみる

 もともとジャンルを問わず本を読むのが好きなのだが、特に遭難に関するノンフィクションが昔から好きだった。

きっかけはこの本。

たった一人の生還―「たか号」漂流二十七日間の闘い (新潮文庫)

たった一人の生還―「たか号」漂流二十七日間の闘い (新潮文庫)

 

 当時、めったに本を読まない祖母が、わざわざ予約してまで買ってきたので、そんなに面白いのかと貸して貰ったところ、描写の生々しさと悲惨さに釘付けになった。

著者はチームの一員としてヨットレースに参加したが、途中で船は転覆。脱出時にクルーの1人が犠牲となり、残った6人によるライフラフト(屋根付きの救命ボートのようなもの)での漂流が始まるも、その時点でほとんどの装備は流出しており、ラフトの中には僅かな乾パンと飲み水しか残っていなかった。

文章は平易でスラスラ読める。鳥を捕まえて生で食べる描写がリアル。

 

救助された後、著者が、自分と同じような経験をした人を求めて読んだ本が「ミニヤコンカ奇跡の生還」だった。

ミニヤコンカ奇跡の生還 (ヤマケイ文庫)

ミニヤコンカ奇跡の生還 (ヤマケイ文庫)

 

1982年、市川山岳会の登山隊によるアタックで、登頂するはずの2名の隊員が悪天候のなか遭難。無線での連絡もつかず、ベースキャンプ(登山のための基地)の隊員たちはアタックチームの生存は絶望的であると判断し、撤収してしまう。

しかし2名は生存しており、ビバーク(緊急の野営)をして悪天候をしのぎつつ、必死の下山を続けていた。

著者は薬草を取りに来ていた地元民に発見され辛くも生還するも、パートナーは下山中に死亡。著者自身も両手指および両足ひざ下を凍傷のため切断した。

注釈無しで登山用語がバンバン出てくるけれど、そこさえクリアすれば読みやすい本だと思う。この本を読むまでは、アイゼンやザイルと言った基礎的な用語すら知らなかった。

ちなみに、著者のパートナーが好んで飲むホットジュースなるもの、未だに正体がわからない。どんな味なんだろう?

 

 ミニヤコンカ山では、この遭難の前年にも、日本人が8名も滑落死する事故があり、「ミニヤコンカ奇跡の生還」内でも言及されている。

その時、危うく難を逃れた隊員が書いた本が「生と死のミニャ・コンガ」である。

生と死のミニャ・コンガ

生と死のミニャ・コンガ

 

 1981年、北海道山岳連盟の登山隊によるアタックで、まず先行の一人が滑落死する。

状況から隊は下山を選択し、下山中に大量遭難が起きる。

著者の眼前で、ザイルで数珠つなぎになった7名の隊員が滑落していく。その著者自身も、今まさに滑り落ちていくザイルに自分のカラビナをかけようと探している途中だった。

 後年、氷河の中で遺体が発見されたという情報が入ると、著者は現地に飛んで遺体を回収、荼毘に付す。また、犠牲となった隊員の子どもたちとも交流する。これが著者のモーニングワーク(喪の作業)となった。

この時の遺体は、時折発見されてニュースになっている。近年では2007年。

blogs.yahoo.co.jp

 

なぜ自分が生き残ったのか。著者たちは皆同じことを考える。

決して生き残ることに貪欲であったわけでもなく、他のメンバーより技術が抜きん出ていたわけでもない。

「ミニヤコンカ奇跡の生還」にはこう書かれている。著者とパートナーは背格好がよく似ており、著者は後ろ姿からふたりを判断してもらうために、パートナーとは異なる紫色のザックを買ってミニヤコンカにのぞんだ。

僕と菅原は、ザックの色の違い程度の差異しかなかった。たったそれだけの差異が、二人の運命を分けてしまったのである。もしミニヤコンカが紫色を好む山だったら、僕が菅原信で、彼が松田宏也に、運命が交換されてたかもしれない。

生と死は、それぐらい些細な違いしか無いのだろうか。

 

 たった一人の生還→ミニヤコンカ奇跡の生還→生と死のミニャ・コンガ、と本の中で言及・紹介されているものをリレー式に読んでみたわけだが、遭難もの、殊に山岳遭難に関しては結構狭い世界のようで、先達の遭難原因を分析するために同じ関連本を読んでいたり、本の著者同士が知り合いだったりすることも多いようだ。なので、本のなかに別の同じような本が紹介されていることも多い。

一つのテーマに絞って、本の中で紹介されている関連本を読みつないでいく、と言うのも結構面白いなと思った次第。

 今読んでいるのはこれ。

 

残照のヤルン・カン―未踏の八千メートル峰登頂記 (中公文庫)

残照のヤルン・カン―未踏の八千メートル峰登頂記 (中公文庫)

 

「生と死のミニャ・コンガ」で言及されていたのでネットで古本を購入。

こういう渋い本が家に居ながらネットで簡単に手に入るようになって、本当にいい時代になりましたね。