家族と自分、上辺だけの自分、精神的な自分 植本一子「かなわない」を読んで

植本一子「かなわない」 - 石田商店

昨年に購入済で、直ぐに読んだのだけれど、自分の中で消化するのには時間がかかりすぎて今に至る。

いや、今でも全容を飲み込めたわけではないけれど。咀嚼中と言っても良いぐらい。

 

簡単に説明すると、植本一子さんは、写真家である。

公式サイトから抜粋。

1984年広島県生まれ
2003年にキヤノン写真新世紀荒木経惟氏より優秀賞を受賞。 写真家としてのキャリアをスタートさせる。
広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活躍中。

2013年より下北沢に自然光を使った写真館「天然スタジオ」を立ち上げ、一般家庭の記念撮影をライフワークとしている。

著書に「働けECD~わたしの育児混沌記~」(ミュージック・マガジン)「かなわない」(自費出版)がある。

キヤノン:写真新世紀|Gallery2003

夫はラッパーのECD。2児あり。

植本さんはECD氏のことを「石田さん」と呼ぶので、この記事でもECD氏を石田さんと書く。

 

この本を、悩める奔放な人間の記録と読むか、自分に自信のない主体性に乏しい人間のつぶやきと読むか、母親になりきれない人間の生き様と読むか。

 答えは上記全てであり、更にいろんな問題を内包している。

 

自分の精神的不安が、生育歴からのものと知った時の、一筋の光明。

自分の中に渦巻く感情に、知り合いの手を借りながら、時には自分自身で、ひとつひとつ折り合いをつけてゆく。

「自分なり」を作ることがどれほど難しく、苦しいことか。

 

この中で、驚くべきは石田さんの超然とした態度である。

石田さんは度重なる植本さんの離婚要求、そして理不尽な感情をぶつけられたときも、声を荒らげることもなく、淡々と受け止める。

植本さんも離婚によって自分が変わるとは毛頭思っていない。石田さんはそこを鋭く見抜いて、その都度うまくかわすのである。

こう言うと石田さんに失礼かな...でも言っちゃおう。まるでタヌキおやじのように決してしっぽを出さない。それが石田さんだ。

そういった意味で、植本さんは石田さんに「かなわない」のではないかな。

それとも石田さんの年の功か(二人は24歳差の夫婦)。

 

 この本を読んでわたしが感じたこと。

もっと自分に素直に、自分を可愛がり、自分をさらけ出す。

そうしていいんだ。周りは関係なく。

当たり前じゃないの、と思うひとも居るかもしれないけれど、その当たり前を知らないひともいるんです。

 

植本さんの中でカタルシスがあるわけではないので、読後感はスッキリしない。

淡々と、ポツポツと語るような文章が真摯で、ときおり、もうこれ以上赤剥けの精神をさらけ出さなくてもいいよ、と痛々しい気持ちにすらなる。

今の自分の生活に少しでも黒い感情があるとき、この本を読むと、クリアになるとは言わないけれど、グレーにはすることが出来るかもしれない。そんな本。

 

 ただ、ひとつ言えるのは、この本は間違いなく私のひとつの指標となり、これからもそうだ、ということだ。